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米国の業界団体Association for Advancing Automation(A3)は11月2日、産業用移動ロボットの相互運用性を定めた国際規格ISO 21423:2026が発行されたと発表した。メーカーや機種が違うロボットでも、同じ施設の中で協調して動けるようにするための決まりである。ロボット、全体を管理するフリート管理システム、周辺設備が、位置、速度、進行方向、稼働状態、担当する作業、使える状態かどうかといった情報を共通の形式でやり取りする要件を示している。基幹業務システム(ERP)やエレベーターなどとの連携も想定している。これまで各社が独自に作ってきた通信の作法に、共通の物差しが入ることになる。

引用元: 異なるメーカーの移動ロボットを連携させる国際規格ISO 21423が発行(Association for Advancing Automation / Business Wire)

分析・見解

各社独自だった言葉づかいに共通の辞書ができる

これまで産業用の移動ロボットは、メーカーごとに通信の作法が違っていた。A社のロボットとB社のロボットは、同じ通路を走っても互いの存在を知らない。そこで現場では、ロボットごとに走る区域を分けたり、時間帯をずらしたりして衝突を避けてきた。

今回の規格は、位置や速度、進行方向、稼働状態、担当作業といった情報の出し方をそろえる。言葉が違う者同士に共通の辞書を渡すようなものだ。辞書があれば、他社のロボットが次にどこへ向かうかを読み取れる。

先行規格との違いは「施設全体」を見ている点

移動ロボットの通信規格は、実は初めてではない。ドイツの自動車業界団体VDAが中心になったVDA 5050や、米国のMassRobotics主導の相互運用性の取り組みなどが先行してきた。ただしこれらは業界団体の標準にとどまり、国際規格としての拘束力や調達での使いやすさに限りがあった。

ISOが加わる意味は、公共調達や大企業の購買仕様書に「ISO 21423準拠」と書けるようになる点にある。しかも対象はロボット同士だけではない。エレベーター、自動ドア、ERPまで含めて、施設全体を一つの系として扱う。ここが従来の取り組みとの大きな違いだ。

本当の効果は通信ではなく、乗り換えやすさに表れる

多くの人は、異機種が一緒に動けることを最大の利点と見る。筆者は、むしろ別の点が大きいと考える。それは、ロボットを後から入れ替えやすくなることだ。

いまの現場では、最初に採用したメーカーの管理ソフトに、その後の増設もほぼ縛られる。値上げや供給の遅れがあっても、乗り換えのために全体を作り直す必要があり、現実には動けない。共通規格が定着すれば、台数を増やすときに最も条件のよい機種を選べる。ロボット市場の競争は、通信の囲い込みから、搬送の速さや安全性、保守の質へ移っていくだろう。

規格があっても、すぐに混在運用が楽になるわけではない

注意したいのは、規格の発行と現場での実用化は別だという点だ。規格は最低限のそろえ方を決めるものであり、細かな挙動は各社の実装に左右される。たとえば、狭い通路ですれ違うときにどちらが譲るかという判断の方針は、通信の形式がそろっただけでは決まらない。

日本でも、FA(工場自動化)の分野ではEtherCATやCC-Linkのように、規格の普及に数年かかった例がある。対応を名乗る製品が出そろい、相互接続の試験で実績が積み上がるまで、おそらく二、三年はかかる。当面は、規格準拠をうたう製品でも、実機で試すことが欠かせない。

ビジネスへの影響

次の調達では「準拠」を仕様書の条件に入れる

今後ロボットを導入または増設する企業は、見積もりの依頼時に、ISO 21423への対応予定を必ず尋ねるとよい。対応時期や対応範囲を文書で答えさせるだけでも、囲い込みの強いメーカーかどうかが見えてくる。

特に管理ソフトの契約では、他社のロボットを接続できるかを条件に入れておきたい。将来の乗り換えの自由度は、契約の時点でほぼ決まるからだ。

導入済みの工場は、既存設備の洗い出しから始める

すでに他社混在で動かしている工場では、まず現状の整理が先になる。どのロボットが、どんな方式で、どの設備と通信しているかを一覧にする。エレベーターや自動ドア、ERPとのつなぎ込みも対象だ。

この一覧があれば、規格対応の更新を各社が出したときに、どこから置き換えるべきかを判断できる。投資の優先順位も付けやすい。

小規模な企業ほど、標準化の恩恵を受けやすい

大企業は自前で連携の仕組みを作れるが、中堅や中小は難しい。規格が普及すれば、システムを組む会社(SIer)の作業が減り、導入費用が下がる見込みがある。一方で、各社の対応状況はばらつくため、パートナー選びでは実績を確かめたい。まずは小さな範囲で異機種の試験運用を行い、効果を数字で確かめてから広げるのが無理のない進め方だ。

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