ニュースの概要
ロシアの産業貿易省とイノポリス大学は、産業ロボットを開発する新しい拠点を13カ所選びました。募集には七つの連邦管区、24都市から、企業や技術系大学、各種団体など合わせて48組が名乗りを上げています。選ばれた拠点には助成金が出され、3年間にわたって、ロボット技術の開発と商品化、企業へのロボットセルやシステムの導入支援、技術者の育成に使われます。今回の追加で、同国の産業ロボット開発拠点は全国21カ所になります。政府が主導して研究開発から現場導入、人づくりまでをひとまとめに進める構図です。
引用元: ロシア、産業ロボット開発拠点を13カ所新設へ(BelTA - TV BRICS)
分析・見解
48組から13組へ、厳しく絞った選考の意味
応募48組に対して採択は13組です。採択率はおよそ27%で、ばらまき型の補助ではないことが分かります。特定の都市に偏らず、七つの連邦管区すべてから応募があった点も重要です。国土が広いロシアでは、モスクワ周辺だけにロボットの知識が集まると、地方の工場に技術が届きません。拠点を各地に置くのは、地方の機械工場や金属加工場の近くに相談先をつくる狙いと読めます。
開発で終わらせず、導入と人材育成を一体にした設計
助成金の使い道が、開発、商品化、導入、人材育成の四つに分かれている点が目を引きます。多くの国の支援策は、研究開発までで止まりがちです。作った装置が工場に入らず、使える人もいないという「死の谷」(=研究成果が事業化の手前で止まる状態)が生まれます。今回は、ロボットセル(=ロボットと周辺装置をひとまとめにした小さな生産単位)を企業に入れるところまで拠点の仕事に含めています。日本の公設試験場やロボットSIerの役割を、一つの枠組みに束ねたような設計です。
制裁下で進む、海外製に頼らない供給網づくり
背景には、海外メーカーの製品やサービスが使いにくくなった事情があります。産業ロボットは、本体のほか、減速機やモーター、制御ソフトなど多くの部品で成り立ちます。どれかが止まれば、保守も増設も止まります。ロシアの産業用ロボットの導入密度は、製造業1万人あたりで見ると、日本や韓国、ドイツなどと比べて大きく低い水準にあります。伸びしろが大きい反面、自前で作れる範囲を早く広げなければ需要を満たせません。21拠点という数は、この遅れを短期間で埋めるための量を確保する意図でしょう。
大学が事務局を担う点に見える、人材重視の姿勢
選考を産業貿易省とイノポリス大学が共同で担う点にも注目できます。同大学は情報技術と人工知能を専門とする新しい大学です。ロボットを機械の問題としてだけでなく、画像認識や制御ソフトの問題として扱う姿勢がうかがえます。今後は、機械、電気、ソフトを横断できる人材の取り合いが、各拠点の成否を分けるでしょう。
ただし、拠点数が増えても成果が出るとは限りません。部品の調達先が限られる中で、性能とコストをどこまで両立できるかが、最初の試金石になります。
ビジネスへの影響
日本の部品・装置メーカーへの影響を冷静に見る
ロシア市場への直接の輸出や納入は、制裁や物流の制約で現実的ではありません。それでも、この動きは日本企業にとって無関係ではありません。ロボット本体で追いつけない国が、まず導入と人材に資金を寄せている点は、参考になる戦い方です。一方で、新興メーカーが第三国市場で安価な製品を出してくる可能性もあります。減速機やセンサーなど、部品で強い企業は、競合の顔ぶれの変化を早めに想定しておくべきです。
中小工場が自社で使える三つの教訓
第一に、ロボットは買って終わりではなく、導入を支える人まで含めて計画することです。ロシアの拠点は、設備と人材育成を同じ予算で動かします。日本の中小工場でも、導入費だけでなく、教育と保守の費用を最初から見積もると失敗が減ります。
第二に、地域の大学や公設の支援機関を、相談先として使い切ることです。第三に、小さなロボットセル一つから始め、効果を確かめてから広げることです。投資の回収期間や進め方は、費用対効果の考え方を整理したページが助けになります。
