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ABB Roboticsは10月15日、精密製造向けの小型産業用ロボット「IRB 1700」と「IRB 1700ID」を発表した。従来機や同クラスの他社製品と比べ、サイクルタイム(=1回の作業にかかる時間)を最大20%短縮できるという。可搬重量は6〜12キログラム、関節の最高速度は毎秒700度、経路再現性(=同じ動きを繰り返したときのズレの小ささ)は0.03ミリメートルとされる。想定用途は電子機器や自動車の組立のほか、搬送、アーク溶接、バリ取り、研磨、工作機械へのワーク投入など幅広い。速さと精度の両立を掲げ、中小型ロボット市場での存在感を高める狙いがうかがえる。

引用元: ABB、サイクルタイムを最大20%短縮する新型産業用ロボットを発表(Assembly Magazine)

分析・見解

20%短縮は、最高速度だけでは生まれない

最大20%という数字は、腕の最高速度だけで決まるものではない。毎秒700度という関節速度は確かに速いが、実際の作業は加速して、止まって、向きを変える動きの繰り返しである。サイクルタイムを左右するのは、むしろ加減速の滑らかさと、動作の終わりに揺れが収まるまでの待ち時間だ。

たとえば1サイクル10秒の組立なら、20%短縮で2秒浮く。1日20時間動かすなら、単純計算で1,800回ほど多く作れる。ただし、ロボットだけが速くなっても、部品を送る装置や検査装置が追いつかなければ待ち時間が増えるだけだ。「最大」という言葉が付く以上、どの条件で測った値なのかも見ておきたい。

0.03ミリの精度が、速さを落とさずに済ませる

電子機器の組立では、部品を挿す位置が0.1ミリずれるだけで不良になることがある。経路再現性(=同じ動きを繰り返したときのズレの小ささ)が0.03ミリなら、位置合わせのためにゆっくり近づく動作を減らせる。速さと精度は、片方を上げるともう片方が下がりやすい関係にある。両方を満たす機種は、遅い動作を挟まない分だけ時間を稼げる。

ただし再現性は、指定した位置に正しく着く精度(絶対精度)とは別物だ。絶対精度が必要な用途では、カメラによる位置補正を併用する前提で考えたい。バリ取りや研磨では、工具の通り道が毎回そろうことで仕上がりのばらつきが減り、手直しの時間も縮む。

小型機の多用途化と、ID型に期待される役割

今回の用途は、組立から溶接、研磨、工作機械へのワーク投入までかなり広い。可搬重量6〜12キログラムの帯域は、FANUCや安川電機、KUKAなども主力機を置く激戦区である。ABBは速度と精度の組み合わせで差を付けにきた格好だ。

末尾にIDが付く機種は、名称から見てケーブルやホースをアーム内部に通す設計と考えられる(詳細は発表内容の確認が必要)。研磨や溶接ではケーブルの引っかかりや摩耗が故障の原因になりやすく、ここを抑えられれば止まる時間が減る。サイクルタイムだけでなく、止まらない時間も生産性の一部である。

協働ロボットとの住み分けが、さらに難しくなる

人と並んで働く協働ロボットは安全面で優れるが、速度を抑える必要がある。高速な従来型の小型機が20%速くなれば、柵や光センサーで囲ってでも使う価値は高まる。ただし、速くなるほど安全対策の費用も上がる。本体の性能向上が、そのまま導入総額の低下につながるとは限らない。ロボット単体の比較から、ライン全体の設計力の比較へ競争の軸が移っているともいえる。今後は、速度を出す工程には従来型、人との共同作業には協働型という使い分けが、さらに細かくなっていくだろう。

ビジネスへの影響

導入前に確認したい、効果を左右する3つの条件

まず、20%短縮の条件を問い合わせたい。搬送距離や可搬重量が自社の作業に近いかどうかで、効果は大きく変わる。次に、現行ラインで全体の速さを決めている工程を測る。ロボット工程が全体の半分しか占めないなら、20%短縮の効果は全体で約10%にとどまる。最後に、供給装置や検査機が追いつくかを調べる。周辺機器の更新が必要なら、その費用も見積もりに含めておく。

デモ機に自社の部品を載せ、1時間あたりの生産数を比べるのが確実だ。

置き換えと新規導入で変わる、投資判断の物差し

旧型ロボットの置き換えは、20%の時間短縮を買う投資になる。生産量が足りないとき、1台増やすより今の台数を速くするほうが、床面積や安全柵の追加を避けやすい。その際は、旧機のプログラムを流用できるかも確認したい。移行の手間が大きいと、短縮した時間を立ち上げで失う。

新規導入では、1台で組立から研磨まで担える点が効く。多品種少量の工場は、ほかの用途へ回して稼働率を保ちやすい。人手不足で熟練者が減る現場では、研磨やバリ取りのように技能に頼ってきた工程を置き換える候補にもなる。ただし条件出しの手間は残るため、立ち上げ要員の確保も計画に入れたい。

見積もり比較は本体価格より停止時間で行う

同クラスの他社製品を比べるとき、本体価格だけで決めると失敗しやすい。ケーブル処理の方式、保守部品の入手性、国内のSIer(=システム構築会社)の対応力で、年間の停止時間は変わる。停止が年間40時間から30時間に減れば、1時間あたり50万円を生むラインで500万円の差になる。比較表にはサイクルタイムと並べて、想定停止時間も入れたい。

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